『地雷』と『わがまま』の境界線
12/19 2025
🌳 中堅 ⓘ ある程度経験を積んだ人。より深く豊かに遊びたい人へ。カテゴリー:プレイ姿勢・在り方編
ChatGPTによるこの記事の3行要約
- 地雷とは本来、心理的に耐えられない表現を避けるための配慮であって、都合の良い展開を要求するものではない。
- 「不快」と「不利」を混同すると、物語に必要な試練や失敗まで拒絶してしまう。
- NGとWantを分けて考え、TRPGは思い通りにならないからこそ物語になる遊びだと理解することが重要だ。
1. あるとき、NGシートを見て固まった
セッション前、GMとしてNGシートを配った。
「苦手な表現があれば、教えてください」
返ってきた内容を見て、私は少し固まった。
「キャラが死ぬのNG」
「キャラが否定されるのNG」
「悲しい展開NG」
「バッドエンド禁止」
「ハッピーエンド確約」
これ、NGシートじゃなくて注文書じゃないか?
もちろん、NGシートは大事な仕組みだ。プレイヤーの心を守るために存在している。
でもこのとき、私の中に小さな違和感が生まれた。
「配慮」と「要望」が、混ざっていないか?
2. 本来の「地雷」とは
「地雷」とは、心理的に耐えられない表現のことだ。
※この表現はあまり良くないんじゃないかという記事も過去に『地雷・脳死・人権…ネットスラングの違和感』で書いたが、ネットスラングとして一般的に認知されている表現であるため、わかりやすさ重視で本稿ではこの言葉を使う。
- 過去のトラウマに直結する描写
- 生理的にどうしても受け付けない表現
- 見た瞬間にフラッシュバックが起きるような内容
たとえば
「虐待描写NG」
「性的暴力NG」
「動物の死NG」
これらは、本人にとって回避しなければならない切実なものだ。
GMはそれを知ったら、全力で避けるべきだと思う。遊びの前提として、安全は最優先だ。
ここに異論はない。
3. 「嫌」と「つらい」は、違う
ただ、最近はこういうケースが増えてきた気がする。
「キャラが負けるのNG」
「思い通りにならない展開NG」
これは、果たして地雷なのだろうか。
正直、私はこれを地雷だとは思えなかった。
キャラが負ける。それは、たしかに嫌だ。
思い通りにならない。それも、気持ちいいものではない。
でも、それは「つらい」のではなく、「嫌」なだけではないか。
「嫌」は感情だ。
ゲームの中で生まれる、ごく自然な不満や悔しさだ。
- ダイスの目が悪かった
- 判断を間違えた
- NPCに冷たくされた
それは、TRPGをやっていれば誰でも経験することだ。
一方で「つらい」は、もっと深い場所にある。
心の傷に触れる痛み。
過去の記憶が呼び起こされる苦しさ。
ゲームとは関係なく、本人の内側で起きていることだ。
この二つを同じ「NG」としてシートに書くと、本当に配慮が必要な人の声が埋もれてしまう。
それが、怖い。
4. 私が見てきたこと
これは私自身の経験だけど、GMをやっていると、NGシートの使い方にはかなり個人差があることに気づく。
ある人は、本当に最小限のことだけを書く。
「これだけは避けてほしい」という一行だけ。
その重みが、ちゃんと伝わってくる。
別の人は、NGシートをびっしり埋めてくる。
「こういう展開は嫌」「こういう結末は望まない」「こういう雰囲気にしてほしい」。
読んでいるうちに、だんだんシナリオの自由度が削られていく感覚がある。
後者が悪い人だとは思わない。
おそらく、過去に嫌な経験をしたのだろう。
不安が強いのだろう。
だから、事前にできるだけコントロールしたい。その気持ちは、わかる。
でも、TRPGは「全部コントロールできる遊び」ではない。
むしろ、コントロールできないからこそ面白い。
- ダイスが予想外の目を出す
- 他のPLが思いもよらない行動を取る
- GMの描写が、こちらの想像を超えてくる
その予測不能さの中で、自分のキャラがどう動くか。何を選ぶか。何を感じるか。
そこにこそ、TRPGの醍醐味があると思っている。
5. 「傷つきたくない」気持ちは、否定しない
「傷つきたくない」という気持ち自体は、何も悪くない。
現実で疲れている。心に余裕がない。だからせめて、TRPGの中では安全な体験がしたい。
それは、ごく自然な感情だ。
ただ、その気持ちが強くなりすぎると、物語の中の「試練」まで全部拒否してしまうことがある。
- キャラが負けるかもしれない恐怖
- 思い通りにならない苛立ち
- 仲間と意見がぶつかる緊張感
それらは「傷」ではなく、物語が動くためのエンジンだ。
試練があるから、乗り越えたときに達成感がある。
失敗があるから、次の判断に重みが出る。
悲しみがあるから、喜びの輪郭がはっきりする。
試練を全部取り除いたTRPGは、たぶん、すごく退屈だ。
6. NGとWant、分けて考えてみてほしい
NGシートに書くべきものは、「絶対に避けてほしいこと」。
つまり、心理的に本当に耐えられない表現や描写。これは、GMが全力で守るべきラインだ。
一方で、「キャラが死なないでほしい」「ハッピーエンドがいい」「恋愛要素があると嬉しい」。これらは、希望だ。GMが「できれば」配慮するもの。ただし、シナリオの都合上、叶えられないこともある。
この二つを、同じ「NG」の枠に入れてしまうと、お互いがしんどくなる。
GMは、本来のNG(心理的安全に関わるもの)と、希望(展開の好み)を同列で扱わなければならなくなる。
プレイヤーは、希望が通らなかったときに「NGを無視された」と感じてしまう。
誰も悪くないのに、全員が不満を抱える。
だから、自分の中で「これはNG」「これはWant(希望)」を分けてみてほしい。
それだけで、NGシートは本来の役割を取り戻す。
GMも、本当に守るべきラインが見えやすくなる。
7. ゲームの結果を、GMのせいにしない
- 戦闘で負けた
- 推理がうまくいかなかった
- NPCに冷たい態度を取られた
それは、ゲームの結果だ。
- ダイスの目が悪かった
- 判断を誤った
- 情報を見落とした
TRPGをやっていれば、そういうことは起きる。
それを「不快だった」「地雷だった」とGMに伝えるのは、正直フェアではないと思う。
GMは、物語を動かす役割を担っている。
その中で、プレイヤーにとって不利な展開が生まれることもある。
でもそれは、意地悪でやっているのではない。
物語として必要だから、そうなっているだけだ。
ゲームの不利を、GMの配慮不足にすり替えてしまうと、誰もGMをやりたくなくなる。
8. TRPGは、試練を一緒に乗り越える遊びだ
TRPGは、思い通りになる遊びではない。
- キャラが負けるかもしれない
- 傷つくかもしれない
- 望んだ結末にならないかもしれない
でも、それでいいのだ。
試練があるから、物語が動く。
失敗があるから、成長がある。
思い通りにならないから、仲間と力を合わせる意味がある。
もちろん、本当につらい表現は避けるべきだ。
NGシートの存在意義は、そこにある。
ただ、「全部自分の望み通りになる物語」は、もうTRPGではない。 それは台本だ。
試練を受け入れる覚悟と、本当に避けるべきものを伝える誠実さ。
その両方があってはじめて、TRPGは健全に成立する。
NGシートは、あなたの心を守るための道具だ。
盾にするのではなく、信頼のために使ってほしい。
最終更新日:2025年12月19日

ポスト