1. NPCは“語り部”ではなく、“生きている誰か”かもしれない
クトゥルフ神話TRPGをプレイしていると、数多くのNPCと出会う。
協力者、情報提供者、敵、犠牲者、狂気の担い手、悲劇の語り部──
物語を動かすために配置された彼らは、しばしば“機能”としてそこに現れる。
けれど、少しだけ視点を変えてみてほしい。
「このNPCは、今何を考え、なぜこういう行動をしているのか?」
情報をくれないNPCに苛立つ前に、その人の気持ちを想像してみる。
恐怖で言葉にできないのかもしれないし、過去と向き合いたくないのかもしれない。
そこに一歩、寄り添ってみたら──それは“対話”ではなく、“関係”になる。
2. 共感型プレイが生み出す“沈黙のドラマ”
共感型のプレイとは、技能や設定に頼らず、
「相手の心を想像する力」で物語を深めていくプレイスタイルだ。
・この人の立場だったら、何を感じているか
・この言葉をどう受け止めただろうか
・この行動は相手にどう映っているか
その想像が、セリフに、選択に、空気に現れる。
NPCは舞台装置ではなく“誰か”として存在し始める。
そしてその関わりが、物語を「追う」ものから「共に歩く」ものに変えていく。
3. プレイヤーの想像力が、卓を即興ドラマに変える
共感は、NPCとの関係だけでなく、PC同士の関係にも力を持つ。
・仲間の行動をどう受け取るか
・その上で自キャラがどう感じ、どう動くか
感情のやり取りが生まれると、卓には“沈黙のドラマ”が立ち上がる。
セリフの間、目線、言葉にならない気配──
そこに現れる濃度が、ルールとは別の“物語の実感”をもたらす。
4. “なぜこの人はそうしているのか”と考えるだけで、世界は変わる
共感型プレイは、ボーナスをくれない。
でも、世界が違って見えるようになる。
NPCの何気ないセリフが、ずっと心に残ったり。
PCの選択に、他のキャラが本気で頷けたり。
そのとき、キャラクターはただの役ではなく、
この世界に生きている“誰か”になる。
「どう動かすか」より、「なぜそうしているか」を考える
その一歩が、TRPGの物語に命を吹き込んでくれる。
● 最後に
NPCを“情報”ではなく“人”として見られるプレイヤーは、
KPにとって信頼できる共演者になる。
世界に耳を傾けてくれる誰かがいるだけで、物語はやさしく動き出す。
共感は、物語を変える魔法。
それは最強でも最善でもない──
──いちばん優しく、いちばん強い“つながりの魔法”だ。
最終更新日:2025年4月25日