シナリオの『意図』を読み取る力
8/27 2025
カテゴリー:GM・物語との関わり編

1. TRPGは自由だ、でも『まったくの白紙』ではない
TRPGはよく「何をしてもいい自由なゲーム」と言われる。
たしかに、プレイヤーの行動に制限はない。
『ドアを開ける』・『ドアを開けない』・『爆破する』・『全部諦めて踊り出す』、すべて選択できる。
でも、TRPGには『シナリオ』がある。
つまり、物語の『土台』は、ある程度用意されている。
- 動線(プレイヤーに向けた誘導)
- 演出(特定の感情を喚起する場面)
- 配置されたNPCやアイテム
それらをまったく無視して暴れまわっても、たしかにゲームは進む。
でも、その結果「セッションが破綻する」「全員の時間が無駄になる」ことだってある。
つまり、自由に遊ぶためには、『その場がどんな時間なのか』を感じ取る必要がある。
2. 「意図を読む」は「メタ読み」じゃない
ここで言う「意図を読む」とは、「このシーン、黒幕が出てくる伏線だな」とか「このNPC、たぶん裏切るな」とか、そういう『推理』のことではない。
もっとふわっとした、空気の読み取りだ。
- 今は『怖がる』ターンなんだな
- ここはちょっとふざけても許される雰囲気だな
- イベントの前っぽいし、大人しくしておこう
- GMが今、描写に力を入れてるから、茶化さない方がよさそう
そういう、『その時間の意味』を感じ取る力。
それこそが、TRPGにおける「意図を読む力」だ。
3. この力がある人は、動線にスッと乗れる
TRPGでは「動線」がとても大事だ。
GMは、プレイヤーが物語の進行にスムーズに乗れるよう、さまざまな『誘導』を仕掛ける。
- 誘導するセリフ
- 特徴的な描写
- 意味ありげな選択肢
これらは「次、こっちに進んでね」という道しるべなのだが、意図を読み取れない人は、これを無視して脱線する。
「気づけなかった」というより、「今、このセリフの意味を考えるべき時間なんだ」と思えない。
逆に、意図が読める人は「お、これは何かあるな」「じゃあ、そっちを選んでみよう」と、自然に動線を拾っていける。
これは、『空気を読む力』に非常に近い。
日常会話で「今、これ以上ツッコんだら空気が壊れるな」と察する感じと、よく似ている。
4. 鍛える方法は『シナリオを意識して見ること』
じゃあ、この「意図を読む力」はどう鍛えればいいのか。
正直、ある程度は経験と観察だ。
- 他のプレイヤーの動きがスムーズなとき、「なぜあの選択をしたのか」を考える
- GMの描写に注目し、「何をさせたいか」「何を伝えようとしているか」を考える
- 実際に回ったシナリオを読んで、「プレイヤーがどこで何を感じるべきか」を意識してみる
特に有効なのは、自分でシナリオを書いてみること。
すると、「ここで怖がってほしい」「ここで笑ってほしい」と思って書いたのに、いざ回すとぜんぜん伝わらない場面に出くわす。
そのとき初めて、「意図を感じ取ってもらうって難しいんだな」と実感できる。
最後に
TRPGは、好きに動いていいゲームだ。
でもその『自由さ』は、空気を読む力の上に成立している。
- 「ここはふざけていい時間だな」
- 「これはGMが真剣に描写してるから、それに乗っかろう」
- 「この後イベントっぽいから、ちょっと静かにしておくか」
そんなささやかな『察し』が、卓の空気を整え、物語を前に進める。
「意図を読む」とは、物語に敬意を払い、場の演出に協力する姿勢でもある。
派手なロールや演技じゃなくても、そういう気遣いができる人こそ、「一緒に卓を囲みたい」と思われるプレイヤーになる。
最終更新日:2025年8月27日