1. 複数NPCを出すのは、シーンの“厚み”を作るため
TRPGにおけるNPCは、単なる案内人ではありません。
ときに情報を持ち、ときに感情を揺らし、ときにプレイヤーの鏡にもなります。
だからこそ、複数のNPCを同時に登場させることには、
物語的にも空気演出的にも大きな可能性があります。
- 一緒に過ごす時間が日常的であることを演出できる
- それぞれが別の価値観を提示することで、選択肢に“厚み”が出る
- プレイヤーが「誰に共鳴するか」で、キャラの方向性が定まっていく
でも、その反面、やりすぎると“うるさいだけ”の場面になるリスクもあります。
だからこそ大事なのが、バランスと配慮です。
2. 全員を“等しく喋らせる”必要はない
複数NPCが出てくると、
「みんなに何かセリフを与えないと!」と思いがちですが、
実はそれが一番テンポを崩す要因になりやすいです。
全員が順番に話すシーンは、
プレイヤーの集中力を途切れさせたり、
「で、結局誰が大事なの?」という混乱を生むことも。
だから、こう考えてください。
- その場で“言葉を発するNPC”は1〜2人で充分。
- 残りは“無言の表情”や“仕草”で反応させるだけでOK。
「喋ってないけど、そこにいた」という存在感を保てれば、
プレイヤーは自然と全員を意識してくれます。
3. セリフに“役割”を割り振る
もし複数のNPCにセリフを与える必要があるなら、
それぞれに「情報・感情・ツッコミ」などの役割を明確にしておくと整理しやすくなります。
例:
- 情報を提供するNPC(冷静・解説係)
- プレイヤーに共感するNPC(感情代弁・寄り添う役)
- 軽口を叩いて場を和ませるNPC(空気調整・ツッコミ)
これだけでも、“誰が何のために話しているのか”が明確になります。
結果として、プレイヤーの耳にも心にも、セリフが届きやすくなります。
4. プレイヤーを“置いてきぼりにしない”ために
複数NPCが同時に動くと、ついやってしまいがちなのが、
NPC同士での会話の応酬。
GMとしては楽しいし、キャラを動かす達成感もある。
でも、その時間が プレイヤーから見て“自分が観客になるだけの時間”になっていないか?
は常に意識したいところです。
NPCの掛け合いを入れるとしても、必ずその直後にプレイヤーが絡める余地をつくる。
たとえば──
- NPC同士が言い争ったあと、「……で、あなたはどう思いますか?」とPCに振る
- 二人の議論の途中で、「おい、ちょっと探索者の意見を聞こうぜ」と話を止める
こういった “舞台の中心にPLを戻す工夫” があると、
複数NPCの場面も “動かすための時間” として機能してくれます。
最後に
複数NPCを出すのは、演出的にも演技的にも大きな挑戦です。
でもそれは、うまく使えば物語に奥行きを与える最高のツールでもあります。
- 全員を等しく喋らせる必要はない
- “会話するNPC”と“そこにいるNPC”を分けて考える
- プレイヤーを中心に置いたうえで、その周囲にNPCを立たせる
このバランスを意識するだけで、
NPCはただの“キャラ”ではなく、“世界の住人”として息づき始めます。
最終更新日:2025年6月3日