推理は“当てる”ことより“広げる”こと

カテゴリ:実践・技術寄りのテーマ / 筆者:キョロ

1. 「当てにいく推理」は、時に物語を狭める

TRPGにおける推理──それはセッションの醍醐味のひとつだ。
複雑な事件、不可解な現象、ちりばめられた手がかり。
そこに意味を見出し、真実に近づいていく過程は、誰にとってもスリリングで楽しいものだ。

でも、ここで忘れてはいけないことがある。
「推理を当てること」だけに集中してしまうと、物語は急に“終着点”になってしまう。

いわゆる「犯人当て」や「真相一点狙い」の姿勢は、
それが外れた瞬間に失速してしまいがちで、
それが当たった瞬間に、ほかの選択肢や世界が“なかったこと”になってしまう。

推理は、“謎を一発で撃ち抜く”ためのものではない。
シナリオの中にある複数の可能性を“試して、比べて、拾い上げていく”ための動作だ。
つまり、「広げる」ことが先にある。

2. 情報をつなぐより、「視点」を増やしてみる

探索の途中、手がかりが増えてきた時、
「つまりこういうことじゃない?」とまとめようとする人が出てくる。
それはとてもありがたいし、場を動かすためにも必要な動きだ。

でも、そこで他の人が「それで決まり」と感じてしまうと、
新しい仮説が生まれなくなってしまうことがある。

ここで大切なのは、“仮説”は結論ではなく、問いかけのきっかけだということ。
プレイヤーの推理は、「真相を述べる」より、「別の見方を持ち込む」ためにある。

こうした意見は、「正解」じゃなくていい。
でも、それがあるだけで、場の思考は広がる。
KPもそれを拾って展開に組み込める。
結果として、シナリオの解像度が上がり、プレイヤー全体が“深く潜れるようになる”。

3. 推理は“共有”してこそ意味がある

もうひとつ、推理において見落とされがちな視点がある。
それは、「推理を独りで抱え込まない」こと。

「分かっちゃったから、言わないでおく」は、時に場の停滞を招く。
逆に、「分かったことを全部一気に語ってしまう」のも、他の人の思考の余地を奪う。

だからこそ、推理は“共有”という形で出すのがベストだ。

このように、“問い”や“引っかかり”のまま出すことができると、
他のプレイヤーがその上に意見を重ねられる。

そして、それが重なっていった先にこそ、“共通の推理”が生まれていく。

TRPGは「全員で作る物語」だ。
だから、推理も“全員で見つけていく”ほうが、気持ちがいいし、深くなる。

4. 「正解より、納得できる展開」を目指そう

ときどき、「自分の推理が当たったことだけが嬉しい」というプレイスタイルを見かける。
それは確かに快感はある。が、それが“自分しか満足していない”状態になってしまうと、卓の温度が下がる。

むしろ、たとえ推理が外れても、「みんなでそれを確かめに行く過程」が面白かった。
そんなセッションの方が、ずっと記憶に残る。

TRPGにおける推理とは、犯人当てではない。
“自分たちが選んで歩いてきた物語に、納得できるかどうか”を確認していく作業だ。

だから、たとえ真相が当たらなくても、
「この結末にたどり着く流れ、面白かったよね」と言えたら、それが正解なのだ。

● 最後に

推理は、“ひとつの答え”にたどり着くためではなく、
“みんなで、ひとつの答えにたどり着けたことを喜ぶため”にある。

問いを出し、選択肢を残し、空気を動かし、物語を耕す。
その力を持っている人は、“答えを知っている人”ではなく、“問いを共有できる人”だ。

次に推理する場面がきたら、こう考えてみてほしい。

──「何を言うか」より、「どうやってみんなを巻き込めるか」を。
あなたの問いかけが、場を広げ、物語を面白くする。
それこそが、TRPGにおける“上級者の推理”なのだから。

投稿日:2025年5月5日
最終更新日:2025年5月5日

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