1. アドリブは「天才の才能」だと思っていた
TRPGを始めたばかりのころ、
ぼくはよく、即興で鮮やかにセリフを返す人を見て、「すごいなあ」と憧れた。
何も考えずにその場でポンポンといいセリフが浮かぶ。
キャラが生きているかのように、自然に、滑らかに言葉を紡いでいく。
──あれは、特別なセンスのある人しかできないことなんだろうな。
ずっとそう思っていた。
けれど、プレイを重ね、いろんな人と卓を囲んで、気づいたことがある。
“アドリブ力”は、センスじゃない。
準備の積み重ねと、心構えの結果だ。
2. 「準備しているから、即興できる」
アドリブが強い人たちは、
何もないところから言葉を出しているわけじゃない。
- キャラの価値観を細かく考えている
- どんな場面でも「こう反応しそう」という軸を持っている
- よくある展開に対して、なんとなく言いたいセリフを持っている
つまり、「無意識に使える下地」を作ってある。
たとえば、
- 友人に裏切られたとき、このキャラはどう言うか?
- 目の前で理不尽なことが起きたら、どんな顔をするか?
- 仲間のピンチを見たら、まず動く? それとも言葉で励ます?
こうした“感情のパターン”をあらかじめ自分の中にストックしているから、
場面が来たとき、自然に“それっぽい言葉”が口をついて出る。
アドリブは、白紙の脳みそからひねり出すものじゃない。
準備してきた小さな想像の積み重ねから、
瞬間的に引き出しているだけだ。
3. アドリブ力を鍛えるのは「脳内練習」
じゃあ、どうすればアドリブ力は鍛えられるのか。
答えはシンプルだ。
「普段から、頭の中で練習しておくこと」。
- 映画を見たとき、「このキャラだったらどう思うかな」と考える
- 何気ない日常でも、「この場面に自キャラがいたらどう反応するか」想像してみる
- ロールプレイ中、喋らない間も「自分ならこう言いたい」を思い浮かべておく
そうやって、「即興のための準備」を日常的に仕込んでおく。
アドリブ力とは、要するに
「引き出しの多さ」と「瞬間的に開けられる慣れ」だ。
一夜漬けでは手に入らないけど、
続けていれば、確実に伸びる。
そして、少しずつ、
「考えなくてもキャラが喋る」
──そんな瞬間が、訪れるようになる。
4. 「うまく即興できなくてもいい」と思える強さ
最後に、すごく大事なことをひとつ。
即興がうまくいかなくても、落ち込まなくていい。
- セリフがぎこちなくなった
- 言い淀んでしまった
- キャラが一瞬ブレた気がする
そんなの、誰にだってある。
うまく即興できなかったからって、
あなたのキャラやあなたのプレイが価値を失うわけじゃない。
大事なのは、
「その場で、キャラと一緒に悩んだ」という事実だ。
うまいセリフを言うことよりも、
キャラクターの心にちゃんと寄り添って動いたかどうか。
それができていれば、
アドリブがうまくいったかどうかなんて、
本当は二の次なんだ。
● 最後に
“アドリブ力”は、天才の持ち物じゃない。
センスじゃない。
積み重ねてきた想像と、ちょっとした勇気でできている。
だから、焦らなくていい。
かっこよく決めようとしなくていい。
ただ、
キャラと一緒に考え、
一緒に迷い、
一緒に喋ろうとする。
その積み重ねが、いつか
「自然に言葉が出る」
「キャラが勝手に動く」
そんな瞬間につながっていく。
そしてそのとき、あなたはきっと思うだろう。
──「準備してきてよかったな」って。
最終更新日:2025年4月29日