『エンディングに向かう』演技を、プレイヤーができるか
8/31 2025
カテゴリー:演出・美学・語り口編

1. 物語は、ちゃんと『終われる』と美しくなる
セッションの終盤。
クライマックスを超え、物語が収束し始めたとき。
プレイヤーとして、何を意識しているだろうか?
- 「まだやり残したことがある!」
- 「キャラの想いを全部語っておきたい」
- 「この余韻をもっと味わいたい!」
そう思う気持ちは、とてもよくわかる。 けれど時折それが『終わりの流れ』をせき止めてしまうことがある。
物語には「終わりに向かう空気」というのが存在する。
そこにキャラごと、そっと身を委ねられるかどうかが、セッションの深みを決めることもある。
2. 終わりに向かうって、どういうこと?
じゃあ、『終わりに向かう演技』って何?
それはつまり、「キャラ自身が、自分の物語の着地点を察して動くこと」だ。
- 旅立つ仲間に、一言だけ声をかける
- 結末が見えている中で、『それでも』希望を選ぶ
- 解決後の静かな日常を、言葉少なに描く
それらは、どれも『終わりの空気』を壊さずに支える演技だ。
「ここが最後になるかもしれない」と分かっているからこそ、キャラが慎重に選ぶ言葉や、そっとした仕草が、胸を打つ。3. 終わらせたくない気持ちとの折り合い
正直、物語を終わらせるのは、寂しい。
楽しかったセッションが終わってしまうこと。
愛着のあるキャラが、表舞台から退場してしまうこと。
それでも、「綺麗に終わること」って、実はめちゃくちゃ尊い。
- 「まだ語れたはず」より、「語りすぎない美しさ」
- 「いつまでもいたかった」より、「ちゃんと去る勇気」
- 「言い残したことがある」より、「あえて言葉にしない意味」
TRPGという『物語の演者』であるなら、ときにその寂しさを抱えたまま、終わりに向かう強さを持ってみてほしい。
4. 『終わる覚悟』を持ったプレイヤーは、卓に信頼をもたらす
「終わりに向かう演技ができる人」は、卓全体の流れを見ている人だ。
- 自分のターンだけじゃなく、物語全体を考えている
- 空気を感じて、引き際を知っている
- キャラの感情と、セッションの進行のバランスをとれる
こういう人がひとりいるだけで、セッションは自然と綺麗に終わっていく。
終盤のロールに『引き延ばし感』が出ない。
そして、それは他のプレイヤーやKPへの信頼にも繋がる。
- 「この人なら、任せられる」
- 「この人の終わらせ方、好きだな」
そう思ってもらえるのは、実は『派手な活躍』よりもずっと難しいことだ。
最後に
TRPGには、明確なエンディングテーマも、スタッフロールも、ED曲もない。
だからこそ、「物語が終わる」っていう感覚をつくるのは、プレイヤーの演技にかかっている。
『ちゃんと終わらせる』ということ。
それは、キャラにとってもプレイヤーにとっても、静かな決断だ。
その決断があると、物語は自然と深くなり、「いいセッションだったね」と心から言えるようになる。
だからこそ、『終わりを察して、そこに向かう』というロールプレイを、ときどきでいいから、意識してみてほしい。
最終更新日:2025年8月31日