『こじつけ』で味付けをする
8/9 2025
カテゴリー:演出・美学・語り口編

1. TRPGの物語は『因果』でできている
TRPGのシナリオには、あらかじめ起承転結がある程度用意されてある。
でも、それだけでは物語は動かない。
そこにキャラクターの行動が入り、選択があり、『つながり』が生まれて、ようやく一つの筋になる。
たとえば─
- 「このNPCに妙に感情移入したから、守ってみたい」
- 「ここで成功したのは、過去のあの出来事と重なる気がする」
- 「仲間のセリフを聞いて、今の自分も変わりたいと思った」
その一つひとつに、『理屈としての正しさ』がなくてもいい。
大事なのは、『意味づけ』をしようとすること。
そしてそれを、キャラの心情として言葉にすることだ。
2. 雑でも「つなげた」ことが記憶になる
たとえば、たまたま判定に失敗してしまった時、 「昔似たような状況で助けられたのに、今回は守れなかった……」 と、キャラの過去とつなげてセリフを足すだけで、ぐっと印象が変わる。
これは、プレイヤーの中にしか存在しない物語だ。
でも、それを出してもらうことで、卓の中の『温度』が上がる。
多少のこじつけでも、『意味があるように感じた』ことを拾う力は、確実にセッションを豊かにする。
逆にいくら設定がしっかりしていても、それが行動やセリフに出てこない限り、物語に影響はない。
ちょっと強引でも、『意味をつくる姿勢』があるプレイヤーは印象に残る。
3. ロールプレイに正解なんてない
「こんな解釈、変じゃないかな?」
「キャラの動機として成立してないかも……?」
と不安になる気持ちはよくわかる。
でも、TRPGのロールプレイに『正しさ』は求められていない。
むしろ、その場の感情や場面に『色』をつけられることの方が大事だ。
- セリフに迷ったら、その迷いごと出せばいい
- 一貫性がなくても、「そういう人間」として描けばいい
- 過去の設定とズレても、「あの時の気持ちとは違う」で済ませていい
『人間らしさ』は、こじつけの中にこそ滲む。
キャラを演じることは、矛盾を解消することではなく、矛盾ごと納得できる『感情の動き』を表すことなのだから。
4. 「意味をつけようとする」ことが、物語を深くする
TRPGの物語は、『偶然』と『感情』の積み重ねだ。
- ダイスの出目で成否が決まる
- プレイヤーの発言で物語がズレる
- 気まぐれなセリフが、いつの間にか伏線になる
だから、たとえこじつけでも、「つなげたくなる心」が物語を前に進める。
- たまたま起こったことに、意味をつける
- 過去の発言に、理由を後から加える
- 感情でつなぎ、キャラとして納得する
その姿勢は、誰かのロールプレイにも影響を与える。
「こういう解釈の仕方、ありなんだ」
「自分も何かつなげてみようかな」
そうやって、卓全体が『演じること』に前向きになっていく。
最後に
こじつけは、創作の原点だ。
たったひとつの出目から、過去が生まれ、理由ができ、物語が動き出す。 それは、即興劇の中でしかできない魔法のような体験だ。
だから、迷ったら堂々とこじつけよう。
自分なりの意味をつけて、キャラとして納得させよう。
その『雑なつながり』が、意外と後になって「あのシーン、好きだったな」と言われるかもしれない。
こじつけは、味付け。
少し濃いめでも、感情に深みが出れば、それで十分おいしい。
最終更新日:2025年8月9日