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1. TRPGにおける『エモい』って何?

まず、言葉の定義からはっきりさせておこう。 TRPG界隈でよく使われる『エモい』という言葉。これは『エモーショナル』=感情が揺さぶられる瞬間を指す。

もっと平たく言えば、
「なんかよくわかんないけど、泣きそうになった」
「言葉にできないけど、心が震えた」
そんな瞬間のことだ。

「演出がすごかったから」とか「ロールがうまかったから」というよりも、その一言、その行動、その沈黙が『心に残った』という感覚。

TRPGにおける『エモい』は、必ずしも「感動」だけじゃない。
切なさ、後悔、希望、寂しさ、怒り、安心感
そういう複雑な感情が、プレイヤー自身の心に『実感として』残る瞬間のことを、みんな口をそろえて『エモい』と一括りにしている。


2. 「ここ、泣くとこです!」はエモくない

TRPGに慣れてくると、誰もが一度はやってみたくなる。
「泣ける展開」「感動のロール」「劇的なラスト」

もちろん悪くない。それを目指して動けるのは立派な技術だ。

ただし、狙いすぎた『エモ演出』ほど、心に届かないものはない

構成としては完璧。
でも、『狙い』が透けて見えた瞬間、空気はちょっと冷める。

「泣かせにきてるな」ってバレたら、それはもうエモじゃない。
エモいは、『気づいたら泣いてた』からこそ成立する。


3. 偶然こそが、心を揺らす

じゃあ、エモいってどうやって生まれるのか。

結論から言うと、エモいは事故だ。

これらは、誰も狙ってなかったのに『意味が生まれてしまった』瞬間だ。
これこそが、エモの正体。

エモいシーンを「作ろう」とするな。
「起きてしまったこと」に、ちゃんと心を動かせ。
その反応こそが、本物のエモを生む。


4. 『構成力』より『感受性』が鍵

構成が悪いとは言わない。演出も技術も大事。
でも、それらを支えるのは「ちゃんと感情が動いているかどうか」だ。

つまり、狙った『エモさ』より、感じた『エモさ』の方が遥かに強い。


5. 無理に『エモに寄せない』勇気も必要

「この展開なら感動するべきだ」
そう思って、『無理に』泣く、笑う、感動する。

それは観客用の芝居でしかない。

エモは『演出』じゃなく『反応』だ。
狙って出すものじゃない。事故で生まれて、後から意味がつく。
その偶然を、偶然のまま大切にできるかが勝負。


最後に

TRPGで心が震える瞬間は、たいてい「予定外」だ。
泣かせにきたNPCじゃなく、偶然重なった言葉の連鎖で涙が出る。
かっこよく決めたセリフじゃなく、震えた声の一言に胸を打たれる。

狙ったエモは、一瞬で忘れられる。
でも、事故の中から生まれた感情は、何年経ってもふと蘇る。

だから、構成に凝るのはいいし、演出もしていい。
でもその上で、「思わぬ感情に動かされた時、自分はどう応えるか」を大切にしてほしい。

エモは、設計図の中にはいない。 事故の中で、『ちゃんと心が動いた人間』にだけ訪れるものだ。


最終更新日:2025年9月22日