1. これは主にオンラインセッションでの話です
まず最初に明言しておくと、このコラムで扱う「ルルブ未所持問題」は、オンラインセッションにおける話です。
オフラインセッションで、みんなでルルブを回し読みする──
それはTRPGのごく自然な遊び方であり、「1冊を数人で共有する」ことが前提になっている場面では問題ありません。
問題になるのは、各自が端末や回線を持ち、自由に参照できるオンライン環境において、
「所持していないけど、なんとなく参加している」という状況が常態化しているケースです。
2. ルールブックを持たずにTRPGをするということ
これはやや強い表現になりますが、
ルールブックを持たずにオンラインでTRPGを行うことは、
“ゲームソフトを違法ダウンロードして遊んでいる”のとほぼ同じ構図です。
- お金を払うべきところを払っていない
- 本来の手順を踏まずに遊んでいる
- 創作物に対して「無料で済ませる」前提で接している
「なんかそういうものだから」で受け流すには、
あまりにも無自覚な“著作物の無断使用”が多すぎる──
それが、今のTRPG界隈にある大きな課題の一つです。
3. 「高い」という気持ちは本当によくわかる
とはいえ、現実問題として、ルールブックは高い。
これはまぎれもない事実です。
CoC6版であれば5,000円前後、他システムでも数千円単位。
学生や収入のない層にとっては、簡単に手が出せる価格ではないことも多いでしょう。
「1回だけ遊んでみたいだけなのに……」
「これから続けるかわからないのに、いきなり数千円は無理……」
その気持ちも、ちゃんと理解できます。
だからこそ、以下のような“グレーじゃない試し方”をおすすめしたいのです。
4. 「ルルブ未所持だけど遊ぶ」ことが成立する場合
すべてがダメというわけではありません。
以下の条件がそろっているなら、ある程度受け入れられる余地はあります。
- その卓のPL全員が未所持であることを認識している
- GMがそれを了承している(“お試し卓”として案内されている)
- リプレイ動画などの副次的著作物ではない(営利利用を含まない)
- あくまで“継続的な参加前提”ではない一時的なプレイである
このような場合、「体験版」「デモプレイ」としての価値は確かにあります。
GMが丁寧にフォローし、「気に入ったら買ってね」というスタンスを明確にしていれば、
“文化の導入”としては成立すると思います。
ただし──
それを何度も繰り返して「いつまでも買わない」ようではダメです。
5. GMにだけは、絶対にルルブを持っていてほしい
これは厳密な線引きですが、GM(キーパー)に関しては「絶対にルルブ必須」です。
なぜなら、GMは「ルールを運用し、裁定する側」であり、
ルールがわからなければ進行そのものが破綻するからです。
極端に言えば、
GMにとってルルブは「教科書」ではなく「機材」であり、「ツール」であり、「現場マニュアル」です。
- 野球で言えばバットとボール
- 音楽で言えば楽譜と楽器
- 演劇で言えば脚本と演出台本
「GMにルルブがないTRPG」は、もはやTRPGとは呼べません。
6. 絶対に見てはいけない“転載サイト”
いまだに見かけるルールブックの全文転載サイト。
ページを丸ごと写し、誰でも読めるようにしている──
これはもう完全に著作権違反です。
明確に「やってはいけない」ラインを越えています。
- 検索して出てくるから見ていい
- “公式”って書いてあったから大丈夫
- みんな見てるから平気
──どれも通用しません。
「それがダメなことだと知らなかった」人もいます。
だからこそ、もしそういう人を見かけても、すぐに責めるのではなく、まずは教えてあげてください。
「それ、実は公式じゃない転載サイトだから、気をつけた方がいいよ」
その一言が、界隈の健全さを守ることにもつながります。
7. 「続ける気があるなら、ルルブを買おう」
TRPGを何度か遊んでみて、
「楽しいな」「またやりたいな」と思ったら──
どうか、ルールブックを買ってください。
ルルブは、「遊び方が書いてある本」じゃなく、「遊ぶために必要なツール」です。
そして、そのお金は「TRPGという文化を支えてくれている人たち」への応援になります。
- ルールを作ってくれた人
- イラストを描いてくれた人
- 編集・印刷・流通に関わってくれた人
そのすべてがあって、僕らは“物語を遊ぶ”ことができている。
だから、ほんの少しでもいい、「遊ぶ側からの感謝とリスペクト」をお金で返す。
それが、TRPG文化を持続させるという意味での、最低限の誠意だと思います。
最後に
ルールブック未所持問題は、センシティブな話題です。
でもだからこそ、ちゃんと語らなければいけないと思っています。
「別にいいじゃん」ではなく、「どうあるべきか」を考える。
その姿勢こそが、プレイヤーとしての“文化との関わり方”に直結する。
あなたがTRPGを好きだと思っているなら──
どうか、その“好き”を、少しだけ行動に変えてみてください。
まだ買ってない人は、ぜひ一度公式で調べてみてください。
きっと、“買ってよかった”と思える本がそこにあるはずです。
最終更新日:2025年5月10日