TRPGはコミュ力がついたと『誤解』しやすい
8/4 2025
カテゴリー:対人・コミュニケーション編

1. TRPGは「会話のゲーム」=コミュ力が必要?
TRPGは、プレイヤー同士の会話で進んでいく遊びだ。
だからこそ、よく言われる。
- 「TRPGってコミュ力必要ですよね」
- 「TRPGをやってたら、自然とコミュ力も上がってきました!」
たしかに、半分は正解だ。
けどもう半分は、けっこう危ない誤解だったりもする。
2. TRPGには『コミュニケーションのルール』がある
TRPGでは、キャラクターのロールプレイやプレイヤー間のやりとりにも『お作法』がある。
言うなれば、コミュニケーションに見えて、ほぼ定型のやり取りだ。
- キャラ同士が会話をするなら、だいたい話す順番は決まっている
- 感情を乗せても、基本的には『想定された範囲内』で展開される
- 誰かの行動がメインになる時は、他の人は基本的に譲る
つまり、TRPG中の会話は「自由な会話」ではなく、「ルールに沿ったゲーム進行」だ。
これは、「苦手な人ほど安心して話せる」ようになっている一方で、自分が話せた=コミュ力が上がったと錯覚しやすい。
3. 現実のコミュニケーションとは何が違う?
TRPG中の会話は、たとえばこういう特徴がある
- テーマが決まっている(世界観、事件、目的)
- 相手は基本的に否定しない(PC同士の対立はあっても、PL同士は建設的にやる)
- 発言の順番や頻度がある程度平等に回ってくる
でも現実の会話は違う。
- テーマは曖昧か、すぐ変わる
- 話しかけても返ってこないことがある
- 話す順番なんてない、会話泥棒も無言もある
つまり、TRPG内の会話は『安心して話せるよう整備された会話』であって、『コミュニケーション能力の実地訓練』とはちょっと違う。
4. むしろ『現実のコミュ力』が求められる場面もある
じゃあTRPGに現実のコミュ力は不要か?というと、もちろんそんなことはない。
- 日程調整で他人の都合を気にしながら提案する』
- 感想戦で相手の気持ちを傷つけないように言葉を選ぶ
- プレイヤー同士のすれ違いが起きた時に空気を整える
こういうのは、ゲーム中の『RP力』ではなく、ガチのコミュ力が問われる場面だ。
そしてこれができないと、どれだけRPが上手くても、なんとなく「一緒にやりにくい人」になってしまう。
5. 「TRPGが上手い人=コミュ力がある」とは限らない
これは大事な話なんだけど、TRPGが上手い人ほど『現実のコミュニケーションが上手い』とは限らない。
むしろ、
「卓上ではめちゃくちゃ話すけど、感想戦はほぼ喋らない」
「自キャラには愛情を注ぐけど、他PLの気持ちには無関心」
みたいな人も、けっこういる。
そして逆もまた然り。
「プレイ中は地味だけど、調整や感想のフォローが上手い人」が、卓全体をめちゃくちゃやりやすくしてくれていることもある。
コミュ力って、『喋る力』じゃなく、『空気に責任を持つ力』なんだと思う。
最後に
TRPGをやっていれば、たしかに会話には慣れる。
自分の思考を言葉にする力、他人の言葉に反応する力、それらは確かに磨かれる。
でもそれは、『決まった土俵でのやりとりが上手くなる』という話であって、現実のコミュニケーション能力が向上したとは限らない。
自信を持つことは悪くない。
でも、そこで慢心したらもったいない。
「コミュ力、上がった気がする」──それ、錯覚かもしれない。
でも、錯覚するくらいには楽しめたってことだ。
だからこそ、そこで止まらずに、もう一歩だけ進んでみよう。
『ロールプレイ』の外側にも、ちゃんと人がいる。
プレイヤーの空気を感じ取ること、声のトーンを拾うこと、ちょっとだけ気を配ること。
その力が育った時、はじめてTRPGは「コミュ力のトレーニング」になる。
ゲームじゃなくて、人と遊んでるってことを、たまには思い出そう。
最終更新日:2025年8月4日