1. 「設定を決めない」という選択が、自由をくれる
キャラを作るとき、背景や性格を細かく練る人もいれば、
「まずは動かしてみてから決めよう」というタイプの人もいる。
いわゆる、キャラシに設定を一切書かない“キャラシ白紙提出”。
これには一定の批判もあるけれど、
ぼく自身、実はその感覚がよくわかる。
というのも、自分もかつて“白紙提出”を選ぶプレイヤーだったからだ。
世界観のなかで何を感じるか、
GMの描くNPCに対してどう反応するか、
他のPCとの関係性がどう変わっていくか。
そういった“外からの刺激”に身を預けながら、
キャラを少しずつ「見つけていく」遊び方。
それは、ある種の即興性と自由を大切にする姿勢であり、
決して“考えていない”とか“丸投げ”ではないと、ぼくは思っている。
2. でも、白紙は「伝わらない」という前提がある
ただ、そのスタイルには明確な弱点がある。
それは、GMにとって“何も伝わらない”ということだ。
たとえば、キャラの性格も口調も動機も書かれていないキャラシを見て、
GMはセッション前に何を想像すればいいのだろう。
- どんな言葉遣いをするのか
- どういう事件への関わり方を想定しているのか
- どんなテーマをぶつけると響くのか
──何ひとつ判断材料がない状態では、
物語の投げかけ方を組み立てにくくなる。
特に、セッション開始前のキャラシ確認だけで全体構成を考えるGMにとっては、
白紙キャラは「空白地帯」になってしまう。
これは悪気がないからこそ生じる、
“スタイルのズレ”によるすれ違いなのだ。
3. 白紙提出は「即興を楽しむ」準備のうちにする
だから、白紙で出すこと自体は否定しない。
ただし、それは“自由に遊ぶための責任”も背負っているということを忘れてはいけない。
- プレイ中、GMや他PLに混乱を与えないよう、“キャラの芯”を素早く立てる
- 設定を後出しにする場合は、その都度“シナリオの流れと矛盾しないよう慎重に提示”する
- NPCや状況の描写に対して、「無反応」ではなく「試しにでも動いてみる」姿勢を持つ
白紙提出というのは、
“何も書いていないキャラ”ではなく、“プレイで描くための余白を残したキャラ”なのだ。
だからこそ、その余白をどう埋めるかは、自分にかかっている。
4. 書かない選択をしたなら、丁寧に“動いて示す”こと
セッションが始まってからキャラを描いていくスタイルは、
とても面白いし、時に“生まれたての感情”がシナリオを揺さぶる瞬間もある。
でもそのぶん、周囲は常に“様子を見ている”状態になる。
- 「この人、どんな人なんだろう?」
- 「どう扱えば物語が進むだろう?」
- 「踏み込んでも大丈夫だろうか?」
だからこそ、白紙で出したプレイヤーが
「受け身にならず、プレイの中でしっかり応答する」ことが必要だ。
- 少しでも話す、動く、反応する
- そこに生まれた“感情”を、自分でも言葉にしていく
- 気づいたら、“キャラシに書いてない設定”が仲間にも伝わっていた
それができると、白紙はただの空白じゃなくなる。
“卓で生まれた関係性そのものが、キャラ設定になる”瞬間が訪れる。
● 最後に
キャラ設定を白紙で出すというのは、
紙の上では“何も語らない”けれど、
プレイの中で“全部語る”という選択だ。
だからこそ、その選択には、
それをやるだけの姿勢と感度が求められる。
うまくいけば、それはとても豊かな遊び方になる。
でも、放置すれば、ただ“誰にも読まれないキャラ”になってしまう。
だから最初から決めすぎなくていい。
けれど、「動きながら見せていく努力」は、絶対に忘れないようにしたい。
白紙のキャラも、物語の中でちゃんと“色”になる。
それを信じて、丁寧にプレイを重ねていけばいい。
最終更新日:2025年4月29日