1. 「かっこいいキャラ」には、誰しも一度は憧れる
最初にTRPGでキャラを作ったとき、
思わず“理想の自分”みたいなキャラクターを作ってしまったこと、ありませんか?
- いつも冷静で頭がいい
- 戦闘では仲間を守って活躍する
- ピンチの時に誰かを励ませるリーダー気質
- 過去に傷はあるけど、それをもう乗り越えている
そういう“かっこよさ”を詰め込んだキャラは、
たしかに頼れるし、ロールプレイもしやすい。
それに、観客として見ていても“わかりやすいヒーロー”は魅力的です。
でも──
それだけだと、心のどこかに“物足りなさ”が残ることもある。
2. 人が心を動かされるのは、“揺らいだ瞬間”だ
誰かのことを「好きになったな」と感じるのは、
その人が強かったときより、“脆くなったとき”の方が多かったりします。
- 普段は明るいキャラが、一人のときだけ泣く
- 無表情なキャラが、少しだけ口ごもる
- 仲間をかばって冗談を言うけれど、声が震えている
- 信念を語るけど、その裏に迷いが見える
そういう“弱さがにじんだ一瞬”に、
「このキャラ、ちゃんと人間なんだな」と思える。
強さだけでは届かない、“共感”という感情に火がつくのは、
たいていそのキャラの“弱さ”を知ったときなのです。
3. 弱さを見せることは、プレイヤーとしての技術でもある
TRPGでは、自分のキャラを演じるだけでなく、
他のプレイヤーに「見てもらう」ことも、ひとつの演出です。
だからこそ、「弱さをどう見せるか」は、
感情の演出として非常に大きな意味を持つ。
たとえば──
- あえて失敗してみる
- 強がってみせたあと、NPCがいなくなったところでだけ俯く
- 「平気」と言った直後に、ダイスを震えるように振る
- 傷ついた仲間に、何も言えずそっと背を向ける
こういった演出は、
“完璧じゃない自分”を見せる勇気があってこそできる。
そしてそれは、卓にいる誰かの心にそっと残る。
「あのキャラの、あの瞬間、忘れられないんだよね」
──そう言われるキャラって、
たいてい“強かった”んじゃなくて、“弱さが美しかった”キャラだったりする。
4. 弱さは、キャラを“物語に繋ぐ鍵”になる
強いキャラは、自立していて“単体で完成されている”ことが多い。
でも、弱さを持つキャラは、誰かと関わることで初めて“完成”する。
- 支えられて変わる
- 受け止められて言葉にできるようになる
- 怒られて、初めて逃げていた自分に気づく
そういう変化が起きたとき、
キャラの成長は“物語の中で生まれる”ことになる。
つまり、弱さを見せるというのは、
「私はひとりじゃ完結しない存在です」と言えることでもある。
そしてそれは、
TRPGという“共演”の場では、
とても、とても大切な美しさになる。
● 最後に
「強いキャラ」を作るのは楽しいし、誇れることです。
でも、それだけじゃ届かない場所がある。
誰かに見られることを前提に、あえて弱さを見せる。
それはとても勇気がいる選択です。
けれど、
物語の中で誰かがその弱さに気づき、
寄り添ってくれたとき、
そのキャラクターは“心に残る存在”になります。
完璧な強さより、誰かと関わってしまう脆さの方が、人の心を動かす。
だから、時には“ブレてみる勇気”を、キャラに与えてみてください。
それだけで、物語はもっと深くなる。
そのキャラは、もっと誰かの記憶に残る存在になります。
最終更新日:2025年5月2日