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1. ハウスルールの実態

TRPGを長く遊んでいると、必ず耳にするのが「ハウスルール」。
とくに『クトゥルフ神話TRPG(6版)』は国内での歴史が長いこともあって、卓ごとに実に多様なローカルルールが存在します。

ただ、その『多様さ』がときに摩擦を生むこともあります。
「うちの卓ではOKだけど、よその卓ではNGだった」
「キャラ作成の上限が全然違うから、他のセッションに持ち込めない」

実際、どれくらいの人がどんなルールを使っているんだろう?
その実態を知りたくて、今回某所でGoogleFormでアンケートを取りました。

合計68件の回答が集まりましたので、今回は1つずつ結果を見ていこうと思います。


2. 「あなたの卓では、『文書化された明確なハウスルール』が存在しますか?」

アンケ1

【解釈】

半数以上が「文書でハウスルールを共有している」と答えました。これはある意味とても象徴的な結果だと思います。
TRPGは、遊ぶたびに初対面の人と同卓することも多く、卓の文化や裁定が異なれば、同じルルブを持っていても体験がまったく違うゲームになってしまいます。
だからこそ「何をどう扱うか」を紙やテキストで示してあることは、それだけで安心感につながります。

逆に「口頭で説明するのみ」というスタイルも、一定数ありました。
柔軟さやフランクさを重んじている卓に多いのかもしれません。
短時間で場を立てたい時や、メンバーが顔見知りばかりの固定卓では、細かい文書を用意するより、その場の会話で決める方がスムーズに感じられるのでしょう。

スタイルは違っても、どちらにも「すれ違いを減らしたい」「安全に遊びたい」という根底の願いは共通していそうです。


3. あなたの卓では、【PC新規作成時の技能値の上限】はどうなっていますか?

※Googleフォームの仕様上、ラベルが映りきっていません。

アンケ2

【解釈】

もっとも多かったのは「80」、次に「85」。これが半数以上を占めました。
つまり、多くの卓で「成功も失敗もありえるライン」が基準になっているということです。

80〜85程度なら、技能が得意なキャラがしっかり活躍しつつ、ダイス目によっては失敗もする。
その『揺れ』が、セッションをドラマチックにしてくれそうです。

一方で「90以上」や「上限なし」と答えた卓もありました。
これらは「短編シナリオでサクサク進めたい」とか「お祭り的に超人的なキャラを楽しみたい」といった明確な意図があることが多いのかなと思いました。

ここから分かるのは、技能値上限というものが単なる数値制限ではなく、卓の方向性や物語の雰囲気を決める大切な『ボリューム調整』の役割を担っているということです。


4. あなたの卓では、「非戦闘時の技能判定」における決定的成功/ファンブルの判定はどうなっていますか?

アンケ3

【解釈】

そもそも、ルールブック準拠だと『非戦闘時は1がクリティカル、100がファンブル(通称CC)』であり、『1~5がクリティカル、96~100がファンブル(通称CCB)』は戦闘時のみというのが基本ルールです。

ですが、「非戦闘でも拡張CCBを採用する」と答えた人がほとんどでした。
理由としては、『CoCブームの火付け役であったリプレイ動画がCCB採用だったため』『1/100はなかなか起きないけど、1/20はそこそこ起きるので面白い』といったところでしょうか。

逆に少数ながら「ルルブ通りに、非戦闘は1だけクリティカル/100がファンブル」とする卓も存在しました。
こちらは「本来の確率バランスを崩さない」「戦闘と非戦闘のメリハリを守る」といった意図が強く、ルールに忠実なプレイスタイルといえるでしょう。

サクサクと予想外の展開を楽しみたいなら拡張CCB、原作ルールの緊張感や設計思想を大事にしたいならルルブ準拠。
どちらが正しいというのはなく、『卓が何を楽しみたいか』で決まる選択肢なのかなと思います。


5. あなたの卓では、スペシャル(技能の1/5以下の出目)を採用していますか?

アンケ4

【解釈】

スペシャルに関しては「採用しない」がもっとも多く、「条件付きで採用する」がそれに続きました。
完全に採用する卓はごく少数派です。
多くの人は「スペシャルは必須ではなく、なくても困らない」と感じているわけです。

また、スペシャルを採用していると答えた方に対して『あなたの卓では、スペシャルをどう処理していますか?』という質問を行いました。
その中でいくつかをリストアップしてみます。

これらから見えてくるのは、スペシャルは「大きく結果を変える制度」としてより、「ちょっと嬉しいサプライズ」を演出するために使われていることが多そうです。
結果を揺るがすよりも、場を盛り上げるきっかけにするような位置づけが実態に近いのかな思います。


6. あなたの卓や過去に参加したセッションで採用されていた「ちょっと変わったハウスルール」を教えてください。

いくつか面白いなと思ったものをリストアップして見ようと思います


【解釈】

チケット制、演出ボーナス、飲食ルールまで、多彩な工夫が寄せられました。

これらはバラバラに見えて、根っこは同じです。
どれも「その卓の雰囲気をより楽しくする」ための工夫であり、参加者同士の距離を縮める仕掛けでした。

ただし、固定メンバーなら楽しいこうした仕掛けも、初対面卓などに持ち込むと戸惑いを生む可能性があります。
「これは一部の人にしか伝わらない文化かも」と一歩立ち止まることも大切なのだと思います。

これらが示しているのは「ルールをどう遊ぶか」以上に、「誰とどんな場で遊ぶか」の重要性でした。
ハウスルールの工夫は、メンバーや場面によって輝き方がまったく違うのです。


全体を通して

現在のTRPG人口でみるとごくわずかなデータですが、なんとなく「標準形」と呼べそうなラインが見えてきました。

もちろん例外もあり、それぞれの工夫が光っていました。
ですが、それらの例外にも「どうしてそうしているか」という意図が添えられていると思います。

ここから分かるのは、ハウスルールは単なる独自性ではなく、「遊びを円滑にするための文化的な仕組み」だということ。
数字や裁定がどうこうよりも、『なぜそうしているかを説明し、納得を共有する』ことが、もっとも大切なのかなと改めて感じました。


最後に

もちろん、ハウスルールは絶対的な正解じゃありません。
でも、「多くの人がどうしているか」を知っておくことは、卓ごとの文化を尊重する上でとても役立ちます。

TRPGは『即興で物語をつくる遊び』ですが、遊ぶ前のルール選びだって物語の一部です。
だからこそ、これから遊ぶ人も、もう慣れている人も
「自分の卓のやり方」を押しつけるのではなく、まずは「みんなはどうしてる?」と聞いてみる。

その一歩が、きっとより良いセッションの始まりになると思います。


最終更新日:2025年9月6日