TRPGと言えば『クトゥルフ神話TRPG』という認識
8/26 2025
カテゴリー:その他・個人のこと/語りの間

1. あえてこの話題に触れてみる
正直、触れづらい話題だが、思い切って言葉にしてみようと思う。
今、日本のTRPG界隈はクトゥルフ神話TRPG(以下CoC)一強時代を迎えている。
エモクロア、ダブルクロス、マダミスなども存在感を放っているが、数と熱量の規模で言えばCoCが頭一つどころか三つくらい抜けている。
以前書いたクトゥルフ神話TRPGの多様性でも触れた(ような気がする)が、CoCはもうジャンルとして独立してしまっている。
そして今や「TRPGってあのクトゥルフのやつ?」という認識すら珍しくない。
そんな中で、X(旧Twitter)でこんなポストを見た。
「TRPG=CoCみたいになってるの、どうなの?」(意訳)
言いたいことはわかる。
でもそのモヤモヤ、『方向』を間違えると、ただの内輪批判になってしまう。
2. 「TRPG=CoC」ではない、でもそう見える理由はある
まず、これははっきりさせておきたい。
TRPG=CoCではない。
当たり前の話だ。システムは無数にある。
それぞれに特徴があり、遊び方も価値観もまったく違う。
でも、なぜ「TRPGといえばCoC」という誤認が生まれるのか。
理由はシンプルで、『CoCの露出が圧倒的に多い』からだ。
リプレイ動画、SNSのセッション報告、シナリオ配布数、同人、キャラ投稿文化。
また、CoCの舞台は現実世界。違うのは、神話生物や呪文といった非科学的なものが存在するくらいなので、世界観としてもわかりやすい。
CoCが持つ「見る」「語る」「二次創作する」余白の多さと土壌の広さは、他システムとは比べものにならない。
エモさ、考察、推理、ギャグ、人間ドラマ…全部できて、しかもとっつきやすい。
TRPGを知らない人が最初に出会うタイトルがCoCであるのは、ある意味当然なのだ。
3. 「CoC以外もやればいいのに」は余計なお世話かもしれない
たとえば、こういう人がいたとしよう。
「TRPGに興味がある」というより、「CoCのリプレイを見て、『これがやりたい!』ってなった」人。
この人に向かって、「他にも面白いシステムいっぱいあるよ」と言うのは簡単だし、おそらく善意からだろう。
でもそれ、すごく余計なお世話でもある。
その人は、TRPGではなくCoCに惹かれたのだ。 あの重さ、あの空気感、あのキャラ同士の化学反応に心を打たれたのであろう。
そこに「インセインの方がRP多くできるよ」だとか「ダブルクロスの方がシステム的に面白いよ」だとか。
そういうのはあとでいい。
最初の感動にちゃんと触れさせてあげることが、いちばん優先されるべきだ。
「カービィのエアライドやりたい!」って言ってる人に、「操作簡単だからマリオカートにしなよ」って返したらどうなるか。
ありがた迷惑って、こういうことだ。
※どっちも神ゲーだけどね。筆者は両方大好きです。
4. KP・GM……知らなくて当然
これもあるあるだが、初心者が「この人がKPですか?」と聞いてきたときに、「KPはCoCだけの呼び方だから他で使うな」とピシャリと言う人がいる。
たしかに、その通りではある。
でも、そんな言い方しかできない人は、『正しさ』を振りかざしただけで『やさしさ』がどこにもない。
正しく教えることと、優しく教えることは両立できる。
『あ、それCoCでの呼び方なんだよね。エモクロアだとDLって言うんだ』
それだけで済む話。
「知らない=悪」みたいな態度は、本当に界隈を狭くする。
しかもそれを、SNSにまで持ち出して愚痴ったり晒したりするのは単なるコミュニティ汚染だ。
5. CoC下げは、あなたの好きなシステムも損をする
これはもう、声を大にして言いたい
『CoCを貶すことで自分の好きなシステムを持ち上げる』 そんなやり方に説得力は一切ない。
- 「CoCは雰囲気だけのシナリオゲー」
- 「CoC勢はRPが浅い」
- 「考察とか痛々しいだけ」
そういう言葉が出てきた瞬間、読み手が思うのはこうだ。
「で?あなたの推しシステムはそれに勝てないんですか?」
CoCが悪いんじゃない。
自分の推しを語る言葉を持っていないことの言い訳に、CoCを使ってるだけ。
CoCから入った人が「いつか別のシステムもやってみようかな」と思ったとき…
その最初のきっかけで聞いたのが、そういう発言だったら?
どんなに素晴らしいシステムでも、語る人がトゲトゲしていたら、魅力も一緒に棘だらけに見える。
つまり、別システムを叩いた瞬間、あなたの推しも一緒に地雷扱いされる。
最悪なのは、CoCへの嫌味で『界隈にいる誰かの熱量』を冷やしてしまうこと。
それはもうTRPGへの愛でも、発展でもない。
ただの『足を引っ張る口撃』だ。
最後に
誰もが最初は初心者だった。 その時見たもの、聞いたもの、感動したものは今もちゃんと心に残ってるはずだ。
今、TRPGに興味を持ってくれた人たちにとって、それがCoCだったというだけの話。
だったら、こう迎えよう。
「沼へようこそ」って。
TRPGは広い。CoCだけじゃない。
でもCoCが悪いわけでもない。
入り口がどこかなんて、どうだっていい。
ちゃんと『好き』になってくれたこと。
そして『遊びたい』と思ってくれた気持ちこそ、守ってあげたい。
その積み重ねが、TRPGの未来につながっていく。
最終更新日:2025年8月26日