1. 「見えないから伝わらない」と感じたこと、ありませんか?
ボイスチャットでのTRPGは便利だ。
距離を超えて、好きなメンバーと気軽に卓を囲める。
でも、その一方で、顔が見えないからこその“やりにくさ”もある。
・冗談のつもりだったのに、シリアスに受け取られてしまった
・本当は驚いたのに、無反応に聞こえてしまった
・ロールプレイ中、反応が返ってこなくて不安になった
・黙っていただけなのに、「大丈夫?」と気を遣わせてしまった
こうしたことは、決して珍しくない。
人の“気配”がないまま声だけが飛び交う環境では、
「伝わっているつもり」が「伝わっていない」ことが、本当によくある。
でも、それは仕方のないことでもあるし、
ほんの少し意識を変えるだけで、驚くほど伝わり方が変わる。
2. 声だけだからこそ、“音の演出”が効いてくる
ボイスチャットでは、「声」がすべての情報源だ。
だから、言葉の内容よりも“声の表情”が伝達力を左右する。
たとえば、感情の変化を伝えたいなら、
大げさにする必要はないけれど、声の速度や音量、間の取り方を工夫すると伝わりやすくなる。
驚いている → 一瞬黙ってから「……え?」と低く呟く
嬉しい → 少し声を上ずらせる、テンポを軽くする
怒り → わざとゆっくり、低めに喋る
不安 → 声量を少し落として、語尾を弱くする
“どういう感情か”を音で示す意識を持つと、伝わり方が一段階変わる。
そして、もうひとつ重要なのが「間(ま)」の使い方。
無言の一拍が、場の空気を動かす。
言葉で語らずとも、“ためらい”や“緊張”を伝える演出ツールになるのだ。
3. 表情の代わりに、反応を“言葉で返す”
対面セッションでは、ちょっとした頷きや視線、顔の動きでリアクションが伝わる。
でもボイスチャットでは、“聞いている”という意思表示すら、音にしないと伝わらない。
だからこそ、小さな相槌が大切になる。
「うん」
「へえ、それは……」
「え、それって……」
「わかる」
「……そっか」
こうした短い合いの手を返すだけで、相手は「ちゃんと聞いてもらえてる」と安心する。
また、無言が続いてしまう場面では、
「ちょっと考えさせて」と一言添えるだけでも、
“無反応”と“考え中”の違いが明確になり、場の停滞感が和らぐ。
4. 気持ちを届けたいときほど、“丁寧な言葉と声”を
ボイスチャットでは、雑な言葉遣いや早口は“冷たく”聞こえることがある。
とくに、キャラの感情が強くなるシーンでは、
「語気が強くなる=怒っている」と誤解されてしまうことがある。
だからこそ、気持ちを伝えたい場面では、ゆっくり、言葉を選んで話す。
「……ありがとう。ちょっと、嬉しい」
「……怖い。でも、行くしかないと思う」
「……ごめん。ほんとに、今のは……ごめん」
こうしたセリフの中に“間”と“静けさ”を混ぜるだけで、
感情の揺れがしっかり伝わる。
そして、何より大事なのは、“話し終わったあとに少しだけ黙る”こと。
言い終えたあと、すぐに次の言葉を重ねずに、一拍だけ置く。
それが、「今の言葉には気持ちがこもっていた」と相手に届ける、最小で最大の工夫だ。
TRPGにおいて、気持ちが伝わるかどうかは、セリフの巧さじゃない。
“伝えようとする意思”が、丁寧に表現されているかどうか。
● 最後に
ボイスチャットは、確かに不便だ。
表情も、手振りも、目線もない。
けれどそのぶん、“声だけで相手に気持ちを届けられたとき”の感動は、ものすごく強い。
だから、焦らなくていい。
かっこよくなくていい。
無理に芝居じみた演技をしなくても、
あなたの「今、これを伝えたい」という気持ちがあるだけで、
ボイスチャットは“ちゃんと伝わる場所”になる。
音だけのやりとりの中で、あなたの声は“空気”になる。
それが届いたとき、物語は、静かに、深く、動き出す。
最終更新日:2025年4月25日