『口プロレス』にはご用心
9/5 2025
カテゴリー:対人・コミュニケーション編

1. ロールプレイが白熱する事自体はいいこと
TRPGの醍醐味のひとつは、やはりロールプレイでの会話劇にある。
- キャラクター同士が対立する
- 正義や信念をぶつけ合う
- 場面を盛り上げるために、感情的なやり取りを演じる
どれも、物語に厚みを持たせる大事な要素だ。
ときには、セッション中に『口プロレス』のような応酬になることもある。
セリフがどんどん熱を帯びて、まるで舞台劇のような展開になることもあるだろう。
でも、ここでひとつだけ冷静に意識しておきたいことがある。
2. 「キャラの言葉」は、「PLの口の上手さ」とは別物
熱いロールプレイの中でつい忘れてしまいがちだが、どれだけキャラを動かしていても、発言しているのはプレイヤー本人だ。
- 自分自身が頭の回転が速い
- 弁が立つ
- 相手の矛盾を指摘するのが得意
- セリフを畳みかけて沈黙させるのが上手い
これらは確かに立派なスキルだし、セッションを盛り上げる力にもなる。
だけど、「自分が口達者だから」「相手より説得力があるから」という理由で、「キャラ同士の優劣」まで決めてしまっていいのでしょうか?
その問いを忘れてはいけない。
あなたのキャラは、『あなた』と同じだけ口が回る存在ですか?
- 心優しいけど口下手なPC
- 感情が先走る熱血タイプ
- 冷静だけど言葉に不器用なキャラ
そういったキャラが、突然PL本人の弁舌で完封勝利するのは、違和感が出てしまう。
3. わざと『負ける』ことで、物語は深くなる
ときには、流れを見て『負ける側』を演じることも、上級者としての演技力だ。
- 反論できずに黙り込む
- 感情的になって空回りする
- 相手の言葉に傷ついて取り乱す
これらは、負けではない。 感情の『受け』として演技を広げる、大事な手段だ。
「論破できないけど、それでも譲れない感情がある」 「負けたけど、心には何かが残った」
そういった『負け方』ができる人は、口達者を超えた芸達者だ。
4. 『声が大きい人』が支配する卓にしないために
「口プロレス」でありがちなのは、『強く出た人の言葉だけが正解になる空気』ができてしまうこと。
- 他のPLが意見を挟めなくなる
- シリアスな雰囲気が笑いで流される
- 一部のPCの感情描写だけが前に出てしまう
そんな事態になったとき、卓の『共感の輪』はゆっくりと壊れていく。
だからこそ、「今、自分はどれくらい『喋ってる側』に偏っているか」をときどき振り返ること。
『黙ってる人』の表情を、想像してみること。
それができるだけで、あなたのロールプレイはもっと愛されるものになる。
最後に
口達者であることは、悪いことではない。
むしろ、プレイの盛り上げ役として重要な役割を果たす場面も多い。
でもそれは、誰かを言い負かすための武器じゃない。
物語を深める道具であり、キャラクターの輪郭を描く筆であり、卓全体の空気を温める火種であるべきだ。
だから、もしあなたが口プロレスに強いタイプだとしても
- 「ここは、自分が喋りすぎていないか?」
- 「この勝ち方は、キャラとして自然か?」
と、一度だけ胸に問いかけてみてほしい。
強くなるより深くなる方が、TRPGという遊びは面白い。
最終更新日:2025年9月5日