「キャラ」ではなく「人間」を演じろ

カテゴリ:キャラクター論・設定運用 / 筆者:キョロ

1. キャラ設定では、まだ動かない

TRPGでキャラクターを作るとき、僕らは「設定」を組み立てる。
年齢、性格、口調、過去──そうして丹念に積み上げたものは、まるで完成された模型のように見える。

けれど、ゲームが始まってセッションが動き出した瞬間、
その「キャラ設定」だけでは、探索者はまだ動かない。
紙の上にいたはずのキャラクターが、急に無機質に感じられてしまう。
なぜだろう?

それは、“人間”としての振る舞いが、そこに足りていないからだ。

2. ロールプレイは「感情の反応」から始まる

たとえば、突然の銃声。
設定に「冷静沈着」と書いてあるキャラなら、動じず判断を下すかもしれない。
でも、“人間”ならどうだろう?

反射的に息を飲む。
言葉が詰まる。
震える指で武器を構える。

こうした“瞬間的な揺れ”こそ、人間らしさの正体だ。
そこに正解はない。あっていいのは、「たしかに今ここにいる」と思える“存在感”。

無言になる。
黙って隠れる。
うまく喋れない。
──そういうリアクションが、「キャラ」から「人間」へと変わる瞬間を生む。

3. “演じる”より“いる”を意識する

ロールプレイをうまくやろうとすると、「どう喋ろうか」「キャラっぽく言わなきゃ」と肩に力が入る。
でも、“演じよう”とするほど、不自然さは見えてしまう。
どこかで台本がちらつきはじめる。

大切なのは、自分の中にいるキャラを“そこに居させる”感覚だ。

「もし自分だったら?」ではなく、
「このキャラが“人間だったら”何を感じ、どう動く?」という視点。

設定には書かれていないけれど──
夜中に眠れなくて天井を見ていた時間、
スーパーで惣菜を選ぶ手の動き、
噛み癖のある指の爪先。

そんな“生活のかけら”をそっと加えることで、キャラは息をし始める。

上手な演技は、いらない。
むしろ、言葉に詰まる瞬間こそが、もっとも深く伝わることだってある。

4. ブレるのは当たり前──だから、面白い

ロールプレイがうまくいかないと感じた時、
「キャラがブレてしまったかも」と落ち込むことがあるかもしれない。

でも、それは悪いことじゃない。
むしろ、“人間”であればブレるのは自然なこと。

緊張して判断を間違える。
他人の言葉に心が動く。
あえて理性ではなく感情で動いてしまう。

そういう“揺れ”があるからこそ、キャラは物語の中で生きる。

一貫性ではなく、納得できる変化。
設定の通りであることよりも、その場で感じたものに素直であること。
それこそが、「演じる」ではなく「存在する」ための道しるべになる。

● 最後に

TRPGは、架空の人生を一時的に借りる遊び。
せっかくなら、“キャラクターとして”ではなく、“人間として”そこにいてみてください。

設定に書かれたことよりも、
その時、どう感じたか、どう迷ったか、どう決めたか──
その過程が、きっと物語の中で一番強く輝くはずです。

投稿日:2025年4月25日
最終更新日:2025年4月28日

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