1. 「卓修羅」って、響きはカッコいいけど
「卓修羅」という言葉がある。
一週間に何卓も掛け持ちして、連日TRPGセッションを回し続けるプレイヤー。
セッション予定がカレンダーを埋め尽くして、
「今月15卓」「今週7卓」なんて話を聞くと、
一瞬、「うわ、すごい」「かっこいい」と思ってしまうかもしれない。
──だけど、はっきり言っておく。
卓修羅って、現実はマジで何もかっこよくない。
カッコいいのは言葉だけだ。
中身は、単なる疲弊と自己崩壊のオンパレードだった。
2. ぼくもかつて、卓修羅だった
偉そうに言ってるけど、
ぼく自身もかつて、完全に卓修羅だった時期がある。
大学四年生。
一番時間があった頃。
最高記録は、1週間で9卓。
平日は夜にオンセ、
土日は昼卓→夜卓の連戦、
隙間時間にはキャラシ作成とシナリオの予習復習。
「今この瞬間がいちばんTRPGしてる!」
「いろんな卓に出れば出るほど成長できる!」
そんなふうに思って、
自分を追い立てるように卓に飛び込んでいた。
最初は楽しかった。
でも、続けるうちに、確実に何かが壊れていった。
3. 卓修羅になると、何が起きるか
まず、プレイに“心が乗らなくなる”。
- どんなに良いロールプレイが飛び交っても、感情が動かない
- シナリオの展開が読めても、驚きや喜びが湧かない
- キャラを動かしているのに、“作業”みたいな感覚になる
次に、卓ごとの区別がつかなくなる。
- このキャラ、どの卓の設定だっけ?
- あれ、こっちの卓で起きたイベントだったか?
- ロールプレイ中に別キャラの口調が混ざる
そして最終的に、周囲にも迷惑をかけ始める。
- プレイの集中力が切れる
- 準備が雑になる
- 感情の乗らないRPで、他人の盛り上がりを受け止めきれなくなる
卓修羅は、自分自身をすり減らすだけじゃない。
一緒に遊んでいる仲間たちの熱量にも、静かに水をかけてしまう。
気づいたときには、
「TRPGをしているのに、ぜんぜん楽しくない」
そんな感覚だけが残っていた。
4. 本当にTRPGが好きなら、走り続けるより、大事に遊んでほしい
ぼくは、あの頃の自分を否定するつもりはない。
全力でTRPGに熱中した日々だったのは事実だ。
でも、今だからはっきり言える。
好きなものを雑に消費するのは、好きなものへの裏切りだ。
TRPGは、数をこなせば偉い遊びじゃない。
たくさん卓に入れば上手くなる、なんてこともない。
一卓一卓を、
一人一人とのセッションを、
ちゃんと心を込めて遊ぶこと。
それが、TRPGを長く楽しみ続けるために、
いちばん大事なことだった。
無理にスケジュールを詰め込まなくていい。
空いてる日に「今日は卓がないな」って、のんびりする日があっていい。
心を取り戻す時間がないまま次の卓に走ると、
いつか本当に、TRPG自体がしんどくなってしまうから。
● 最後に
「卓修羅」って、言葉だけ聞けばかっこよく響く。
でも、現実はそんなに甘くない。
疲弊して、
燃え尽きて、
好きだったはずのTRPGに、心が追いつかなくなっていく。
そんなふうに、自分の「好き」を壊してしまわないために。
どうか、卓を“走る”んじゃなく、“育てる”ように遊んでほしい。
TRPGは、回数じゃない。
スピードでもない。
一回一回の物語を、大切に味わう。
それが、あなたのTRPG人生を、
きっともっと豊かにしてくれる。
最終更新日:2025年4月29日