「わたし」という名前のキャラクターを演じている話
4/25 2025
カテゴリー:その他・個人のこと/語りの間

1. アイム人見知り
私は、人見知りだ。
人と話すのが得意ではない。というより、だいぶ苦手な部類だと思う。
知らない人と喋る場面では、頭の中で何度も言葉を並び替え、ようやく一言を口に出す。
それでも上手く伝わったかどうか不安になって、家に帰ってからぐったりしてしまう。
だけど、そう話すと、決まって「意外だね」と言われる。
「そんなふうには見えない」とか、「社交的だと思ってた」とか。
最初は、その言葉に戸惑っていた。
でも、ふと思い当たることがある。
たぶん、高校生になったあたりから、私は『理想の自分』のロールプレイを始めた。
2. なりたかったのは、『誰かに話しかけやすいキャラ』
私が演じてきたキャラクターは、言葉が明快で、よく笑って、人の話を引き出すのが上手い。
周囲に溶け込めて、でもちゃんと個性も持っている。
「なんかあの人、話しやすいよね」と言われるような存在。
そういう『キャラ』になりたくて、少しずつ演技を重ねていった。
芝居ではなく、でもたしかに『演技』だったと思う。
セリフのパターン、笑い方、話の切り出し方、声のトーン。
そうやって少しずつ、「私」というキャラを作っていった。
それは、生きやすくなるための工夫だった。
そしていつしか、その演技が『素の自分』として認識されるようになった。
3. 過去の自分に出会った時
中学生時代以前の友人と会うと、私は急に喋れなくなる。
- 言葉をうまく組み立てられない
- 話が続かない
- 普段の調子が出ない
不思議なほど、たどたどしくなる。
それはたぶん、当時の自分にはまだこの『キャラ』がなかったから。
彼らの前では、演じる前の自分が、そのまま出てきてしまう。
そしてそのたびに、今の自分が『選び取った人格』なんだということに気づかされる。
でも、それは『偽物』という意味じゃない。
むしろ、時間をかけて、試行錯誤して、「この方が、自分らしく生きられる」と感じてきた姿が、今の私なのだ。
4. 『キャラクター』としての自分を信じている
私はたぶん、人生をかけてロールプレイをしている。
- 演じることで、『人と話せるようになった』
- 演じることで、『関係を築くことができた』
- 演じることで、『自分を守ることができた』
そして、演じ続けるうちに、このキャラが、だんだん本当の私になっていった。
TRPGと違って、この『キャラ』にエンディングはない。
でも、このRPは『やめる』んじゃなく、『馴染んでいく』ものなんだと思う。
自分で選んだ言葉、
自分で選んだふるまい、
自分で選んだ在り方。
それを繰り返していくうちに、『演じていたキャラ』と『私自身』が重なっていく。
それは、決して嘘じゃない。
私が今もこうして人と関われているのは、このキャラを信じて、演じ続けてきた自分がいるからだ。
最後に
これが、私にとっての「わたし」という名前のキャラクター。
たぶん、私が一番長く続けている、いちばん大切なロールプレイだ。
最初は『演技』だった。
でも、それを続けることで、少しずつ『本当の自分』に育ててきた。
- 誰かの前でうまく話すために
- 人と関われるようになるために
- 不安や孤独に押しつぶされないように
そうやって、自分を守るために選んできた姿。
それは、演じていたからこそ生まれた『生き方』であり、嘘ではなく、自分で育てた『本音の自分』なんだと思います。
TRPGのキャラクターも、たくさんの選択の中から『その姿』を選んだときにこそ、生きているように感じられる。
私の「わたし」も、そんなふうに、選び取った末に生まれたキャラクターでした。
誰だって、自分の人生をRPしているのかもしれない。
だからこそ、誰かと出会って関われることは、奇跡に近い『セッション』なのだと思います。
/最終更新日:2025年7月31日