1. 目立とうとすると、かえって薄くなることがある
TRPGのセッションにおいて、目立つというのはある意味とても簡単だ。
声を張り上げる、笑いを取る、印象的なセリフを畳みかける。
そうすれば、確かにそのシーンでは「注目」を集めることができる。
でも、終わってみると──
「あれ?印象にはあまり残っていないな」と感じることがある。
それはなぜか?
“目立つ”というのは、瞬間的な“視線の集中”でしかない。
セリフが多くても、声が大きくても、その言葉が心に届いていなければ、
場をにぎわせただけで終わってしまう。
本当に印象に残るキャラというのは、しゃべりすぎない。
一言、あるいは沈黙で、その場の空気を変える。
そういう存在は、セッションが終わったあとにも、じんわりと思い出される。
2. 印象に残る人は、“場を動かしている人”
では、“印象に残る”プレイとは、どういうものだろう?
答えのひとつは、「その人の行動が、場の空気や物語を変えた」と感じられること。
- 場面のテンポを落ち着けるために、あえて言葉を減らした
- 緊張感のある場で、少しだけ空気を和らげるジョークを入れた
- 誰かの独白に、無言で頷いた
- シナリオのテーマを、短い言葉で静かにまとめてくれた
これらはすべて、“目立つ動き”ではない。
けれど、卓の流れに自然に作用した動きであり、だからこそ“記憶に残る”。
そういったプレイヤーには、他の人も安心して場を委ねられるし、
「この人と遊ぶと、物語が気持ちよく進む」と感じさせる力がある。
「空気を支配する」のではなく、「空気に馴染みながら、自然に導いていく」
──それが、印象に残るプレイヤーの共通点だ。
3. “印象に残る人”になるために必要なこと
「目立つ必要はない」「印象に残る方がいい」と言われても、
「でも自分にはそんな演出力がない」「セリフセンスもない」と思う人もいるかもしれない。
でも、安心してほしい。
印象に残るプレイの本質は、“自分の在り方”にある。
- 場面を壊さない
- 他人のセリフに丁寧に反応する
- 喋りすぎない
- 語りすぎない
- でも、必要なときには一言を置く勇気がある
それだけで、十分に“空気を残せる”プレイヤーになれる。
そしてなにより、“誰かの主役の時間”を支えることができる人は、必ずどこかで主役になる。
それは、目立つ番が来るという意味ではなく、
「この人が言ったことが物語を決めた」と自然に思わせる瞬間が回ってくるということ。
4. 記憶に残るキャラは、自然に浮かび上がる
TRPGで何度も遊んでいると、印象に残るキャラが自然と増えていく。
思い返すと、そのキャラたちに共通しているのは、
「しゃべり倒した人」ではなく、「雰囲気を作っていた人」であることが多い。
- みんなが沈んでいる場面で、あえて何も言わなかった
- 理屈ではなく、直感で動いてしまった瞬間に真実が見えた
- 他PCを尊重した行動が、思いがけず全員の進路を決めた
そういう、「思い出したときに、静かに浮かび上がるキャラ」が、
“印象に残る”ということの真意なのだ。
● 最後に
だから、焦らなくていい。
無理に笑いを取らなくていい。
語らずとも、空気は伝わる。
場を壊さないように丁寧に過ごしていれば、
ちゃんと、あなたのキャラは浮かび上がってくる。
“目立つ”ことは、目を引くこと。
“印象に残る”ことは、心に残ること。
そのふたつは、まったく違う価値を持っている。
次のセッションでは、ぜひ、“心に残るキャラ”を目指してみてください。
あなたの静かな一言が、物語の余韻になるかもしれません。
最終更新日:2025年4月29日