たった一手の行動が、物語を終わらせるとき

カテゴリ:演出・美学・語り口編 / 筆者:キョロ

1. TRPGの物語は、たいてい“一瞬”で決まる

TRPGでは、キャラクターたちの選択が物語を進める。
複数人が同時に動く、複雑で重層的なドラマ。
──のはずなのに、
ふと気づくと、物語の分岐点は“たった一言”や“一手”だったりする。

そのたった一手が、
物語を大きく動かすどころか、“終わらせてしまう”こともある。

2. 悔しさは、“自分で動いた証拠”でもある

「まさか、あれで終わるとは思わなかった」
「いや、あのとき止めていれば──」
「自分があんなことを言わなければ……」

そんなふうに、後から何度も反芻してしまうセッションは、誰にでもある。

でも、それは“後悔するほど、自分の選択だった”という証明でもある。

選ばされたのではなく、
選び取ってしまった結果として物語が閉じたなら、
そこにはたしかに「自分で物語を動かした」という実感がある。

それは、うまくいかなかった物語でさえも、
心に残る“記憶”として強く刻まれていく。

3. 大切なのは、「終わらせないように動く」ことではない

プレイヤーの中には、
「自分の行動でセッションを壊してしまわないか不安だ」と思う人もいる。

でも、物語が終わるのは“誰かのせい”じゃない。
“物語にそういう終わりが訪れた”だけだ。

そして、TRPGの物語においては──
その“終わり方”こそが、一番プレイヤーを試す瞬間になる。

それをプレイヤー自身がちゃんと考えられたとき、
たとえ失敗に終わった物語でも、それは“完結”になる。

4. “その一手”に物語を預けられるだけの信頼を

GMとして、プレイヤーの選択によって物語が終わってしまうことは、
実はとても勇気のいることだ。
でも同時に、それが一番信頼している形でもある。

「あなたのキャラがここでどう動くかで、物語が決まる」
そういう瞬間に立ち会えたとき、
GMとPLの間には、目に見えない“共犯関係”が生まれている。

だから、もし“最後の一手”を選ぶ立場になったとき──

どうか臆せずに、選んでみてほしい。
その手が「間違いだったかもしれない」と思っても、
それは“選んだからこそ物語が閉じた”
という証なのだから。

● 最後に

TRPGの物語は、派手な戦闘でも、感動の大団円でもなく、
ひとつの選択で、すっと終わってしまうことがある。

それは、拍子抜けかもしれない。
でも、だからこそ心に刺さる。

“たった一手”を選んだのが、あなたであること。
その選択が、キャラの信念や感情の上にあったこと。
そしてそれが、たとえ物語を終わらせたとしても、“物語として美しかった”と信じられること。

それができたなら──
きっと、あなたはもう物語の一部だったということだ。

投稿日:2025年4月25日
最終更新日:2025年4月25日

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