1. ファンブルって、どういうルールだったっけ?
ファンブル(致命的失敗)と聞くと、「96〜100で発生」というのがプレイヤーの間では一般的な認識かもしれません。
けれど、実はこの定義、ルールブック上は少し異なっています。
クトゥルフ神話TRPG(6版・7版)における本来のファンブルの定義は以下のとおりです:
- 戦闘や危険な状況においてのみ、96〜100をファンブルとする(技能値50%未満であれば範囲が広がる)
- 探索などの“非危険”な行動においては、100のみがファンブル扱い
つまり、「常に96〜100がファンブル」というのは拡張ルールであり、
プレイグループやGMの裁量に委ねられているものです。
2. あえて“厳しめファンブル”を導入する理由
ぼく自身も、自分がGMのセッションでは戦闘以外でも96〜100をファンブルとして扱っています。
これは、単純に「失敗しやすくしたい」という意図ではありません。
“物語に緊張感が生まれる”からです。
- 調査中に重要書類をうっかり破いてしまった
- 隠れていたはずが、盛大にくしゃみをして見つかってしまった
- 説得のつもりが、かえって相手の逆鱗に触れてしまった
こうした“ちょっとした事故”が物語の温度を変える瞬間は、
プレイヤーにとってもGMにとっても、予期しないスパイスになります。
ただし、これは「事故=罰ゲーム」になってしまうと逆効果。
ファンブルを導入するなら、それが物語に“面白く作用する”ための工夫が必要です。
3. ファンブル処理のコツは、“納得できる偶然”にすること
ファンブル処理で大切なのは、ただの“嫌がらせ”にしないこと。
プレイヤーが「その結果、物語が面白くなった」と思えるように、
“筋の通ったトラブル”として描くことが必要です。
以下はファンブル処理の際のコツです:
- ✅【1】“世界の反応”として処理する
キャラ自身の能力不足ではなく、外部要因による失敗として描くとリアリティが保たれます。
例)「鍵を開けようとしたら、向こうからドアが開いてしまった」「質問しようとしたら、相手の電話が鳴って中断された」 - ✅【2】“別の方向に進む”誘導にする
ファンブルで道が封じられる代わりに、別のルートを示す。
例)「この人物からは情報が得られなかったが、代わりに別の情報源が浮上する」「証拠は壊れたけれど、その痕跡から違う仮説が導き出される」 - ✅【3】“キャラの人間味”を強調する演出にする
失敗をキャラの個性に昇華させる。
例)「いつも冷静なキャラが、今回だけ動揺して手が滑る」「ポンコツ扱いされてたキャラが失敗しても愛される空気になる」 - ✅【4】“失敗したことで他人が動く”構図にする
ファンブルを他PCの活躍のきっかけにする。
例)「誰かが失敗した後、別のPCがカバーして信頼が芽生える」「行き詰まった空気がファンブルをきっかけに動き出す」
4. 失敗は、動かない物語を“転がす装置”になる
ファンブル処理がうまくいくと、そのミスが場面の主役になる。
- 一言のしくじりから、NPCの態度が変わる
- 情報のミスリードが、新たなドラマを生む
- 危機的状況に追い込まれたからこそ、キャラの信念が試される
これこそ、TRPGの醍醐味だと思うのです。
「成功すれば物語が進む」「失敗すれば停滞する」という構図から脱却して、
「失敗しても動ける」「ミスが物語を深める」と考えるプレイスタイル。
それを支えるのが、上手なファンブル処理なのです。
● 最後に
だから、ファンブルが出たときは、落胆しなくていい。
むしろ、「ここから、面白くなるぞ」と思っていい。
失敗は、物語が動く音。
処理に工夫があれば、事故はいつだって演出に変わる。
最終更新日:2025年4月29日