1. クリティカルの定義って、実は状況依存
TRPGにおけるクリティカル──つまり“会心の成功”は、場を一気に盛り上げる、とてもドラマチックな要素だ。
クトゥルフ神話TRPG(6版・7版)におけるルール上の定義は以下の通り:
- 探索・交渉・技能使用などの“通常状況”では、「1」が唯一のクリティカル
- 戦闘などの“緊張状態”では、技能値によって「1〜5」または「1〜10」がクリティカルになる
つまり、「常に1〜5をクリティカルとして扱う」というのは、
ルール拡張に基づく、ハウスルール的な運用なのだ。
2. あえて“クリティカルが出やすい卓”にする理由
ぼく自身も、戦闘以外でも「1〜5はクリティカル扱い」にしている。
その理由はシンプルで、“物語がドラマチックに転がるチャンス”が増えるからだ。
たとえば──
- 聞き込みの際、偶然隣にいた人物が核心情報を握っていた
- 検索中に、隠された“本来は見つからないはずの記録”を発見した
- 修理中の機械が、むしろ改造されて高性能になる
- NPCとのやりとりで、急激に好感度が上がって味方化する
こうした“奇跡のような展開”は、
確率上、1だけでしか起こらないと非常に稀。
でも1〜5までをクリティカルとすることで、
「偶然が物語を動かす瞬間」が自然に生まれやすくなる。
3. クリティカル処理のコツは“ご褒美”と“余韻”の設計
クリティカルが出たとき、
ただ「成功度が高い」だけではもったいない。
せっかくの“奇跡”なのだから、
少しだけ物語を動かすご褒美を添えたい。
以下は、クリティカル処理で意識すると面白くなるポイントです:
- ✅【1】“一歩先の結果”を出す
単なる成功では届かない“もうひとつ奥の情報”や“想定外のリアクション”を提示。
例)「鍵を開けようとして、隠し引き出しに気づいた」「調査結果から、依頼人の嘘まで見抜いた」 - ✅【2】“偶然の味方”を配置する
成功そのものに「運が良かったな……」と思える描写を加える。
例)「通りすがりの通行人が偶然助けてくれた」「引き出しの中にあったメモが、偶然自分の故郷の方言だった」 - ✅【3】“ロールプレイのきっかけ”を作る
プレイヤーが感情を動かしやすくなる演出を返す。
例)「亡き家族の手記を見つけた」「敵NPCが心を開き、過去を打ち明ける」 - ✅【4】“余韻”を持たせて静かに締める
にぎやかに盛り上げるのではなく、静かに沁みるクリティカル処理も美しい。
例)「ページの端に書かれた名前が、探索者の記憶を揺さぶる」「開いた扉の向こうに、風が吹き抜けた──それだけの場面」
4. “奇跡の出目”を、ただの数字で終わらせない
クリティカルが出たとき、
「やった!成功した!」で終わるのは、もちろん悪くない。
でも、
その一瞬を物語の転換点にできたら、それはもう“演出”。
TRPGの面白さは、“たまたま”が物語になること。
出目にドラマが乗る瞬間、それをどう返すかはGM次第、そしてPL次第。
だから、クリティカルを見かけたときは、こう考えてみてほしい。
「この幸運、どんな景色に変えられるだろう?」
1が出たらもちろん、
2、3、4、5だって、物語が動く可能性を持っている。
そしてその出目は、
キャラクターに与えられた“人生の風向き”のようなもの。
それを受け取って、リアクションを返す。
その連鎖が、セッションを“運任せ”から“演出”へと変えていく。
● 最後に
クリティカルは、“物語に光が差す一瞬”。
そこにどんな意味を乗せるかで、
その光は“ただの当たり目”から、忘れられない奇跡になる。
最終更新日:2025年4月29日