クリティカル処理
4/29 2025
カテゴリー:演出・美学・語り口編

1. クリティカルの定義って、実は状況依存
※便宜上、CoC6版をベースに話を進めます。
TRPGにおけるクリティカル──つまり『会心の成功』は、場を一気に盛り上げる、とてもドラマチックな要素だ。
クトゥルフ神話TRPG(6版)における本来のファンブルの定義は以下のとおりです。
- 戦闘や危険な状況においてのみ、1~5をクリティカルとする。
- 探索・交渉・技能使用などの『通常状況』においては、1のみがクリティカル扱い
つまり、「常に1〜5がファンブル」というのは拡張ルールであり、卓やGMの裁量に委ねられているものです。
2. あえて『クリティカルが出やすい卓』にする理由
私自身、戦闘以外でも「1〜5はクリティカル扱い」にしている。
その理由はシンプルで、『物語がドラマチックに転がるチャンス』が増えるからだ。
たとえば…
- 聞き込みの際、偶然隣にいた人物が核心情報を握っていた
- 検索中に、隠された『本来は見つからないはずの記録』を発見した
- 修理中の機械が、むしろ改造されて高性能になる
- NPCとのやりとりで、急激に好感度が上がって味方化する
こうした『奇跡のような展開』は、確率上、1だけでしか起こらないと非常に稀。
でも1〜5までをクリティカルとすることで「偶然が物語を動かす瞬間」が自然に生まれやすくなる。
3. クリティカル処理のコツは『ご褒美』と『余韻』の設計
クリティカルが出たとき、ただ「成功度が高い」だけではもったいない。
せっかくの『奇跡』なのだから、少しだけ物語を動かすご褒美を添えたい。
以下は、クリティカル処理で意識すると面白くなるポイントです──
- ✅【1】『一歩先の結果』を出す
単なる成功では届かない『もうひとつ奥の情報』や『想定外のリアクション』を提示。
- 「鍵を開けようとして、隠し引き出しに気づいた」
- 「調査結果から、依頼人の嘘まで見抜いた」
- ✅【2】『偶然の味方』を配置する
成功そのものに「運が良かったな……」と思える描写を加える。
- 「通りすがりの通行人が偶然助けてくれた」
- 「引き出しの中にあったメモが、偶然自分の故郷の方言だった」
- ✅【3】『ロールプレイのきっかけ』を作る
プレイヤーが感情を動かしやすくなる演出を返す。
- 「亡き家族の手記を見つけた」
- 「敵NPCが心を開き、過去を打ち明ける」
- ✅【4】『余韻』を持たせて静かに締める
にぎやかに盛り上げるのではなく、静かに沁みるクリティカル処理も美しい。
- 「ページの端に書かれた名前が、探索者の記憶を揺さぶる」
- 「開いた扉の向こうに、風が吹き抜けた──それだけの場面」
4. 『奇跡の出目』を、ただの数字で終わらせない
クリティカルが出たとき、「やった!成功した!」で終わるのももちろん悪くない。
でも、その一瞬を物語の転換点にできたら、それはもう『演出』。
TRPGの面白さは、『たまたま』が物語になること。
出目にドラマが乗る瞬間、それをどう返すかはGM次第、そしてPL次第。
だから、クリティカルを見かけたときは、こう考えてみてほしい。
「この幸運、どんな景色に変えられるだろう?」
1が出たらもちろん、2、3、4、5だって、物語が動く可能性を持っている。
そしてその出目は、キャラクターに与えられた『人生の風向き』のようなもの。
それを受け取って、リアクションを返す。
その連鎖が、セッションを『運任せ』から『演出』へと変えていく。
最後に
クリティカルは、『物語に光が差す一瞬』。
そこにどんな意味を乗せるかで、その光は『ただの当たり目』から、忘れられない奇跡になる。
最終更新日:2025年7月30日